社長のひとり言2015年

第68回 『デジタルとアナログのはざまの価値』

随分と前から、毎日の通勤の途中にある『焼き鳥屋』が気になっていていつか行こう、行こうと思っていた店がある。

先日、取引先の社長とその話題が出て、一緒に行く事になった。

風情ある店構えで期待できる!!
中に入ってみると仕事帰りのサラリーマンでほぼ満席。
(全部で20席程度だろうか?)
ちょうど奥の4人席が1ヶ所空いていたのでそこに通される。
待ち時間0である。(ラッキー!)

席に着いて驚愕した事がある。
何とメニュー表がiPadの様なタブレットなのである。店構えはレトロな昭和感満載なのに…である。
しかもオーダーもそのタブレットから行うのである。つまりオーダーを聞きにくる店員がいない…(驚)
「とりあえず生中!」と言えないのである。
(とりあえず生中と言いながらそのタブレットのコマンドを押す。)

店構えとその中身のギャップに違和感を覚えたのは事実で、店員さんとの会話やコミュニケーションがないのは何とも寂しい限りですね。
焼き鳥は美味かったのですが、また行きたいか…となると話は別で、求めていたのは「そこ」じゃないんですヨネ。

この感覚、おわかり頂ける方はおわかり頂けると思います。

そう言えば、弊社タクト設計事務所のHPもスマホ対応にリニューアル中で、HP制作会社から端末チェックの依頼が増えてきた事からとうとう私(佐藤)もガラケーからスマホに買い替えました。

iPadは仕事上、持っていたのですが、スマホは初めてで
特に戸惑ったのは『LINE』機能。
例えば今まではメールで「今から伺います」と送信すると
「お待ちしております」と返信されるものが、
LINEだと
「今から伺います」⇒   スタンプ(???)
えっ つまりワンクリック…ですか?

当然ですがこのやりとりに音声(声)はありません。
子供のころから物事のやりとりを電話などの音声で伝え、伝えられる時代と伴に生きてきた者としては声のトーンで
「怒っているな…」とか「元気ないな…」とか「今日は機嫌良さそうだ…」とか察してフォローすることでうまく乗り越えてきた経験はもはや通用しないのでしょうか?

住宅の建築に関してもここ10年で大きく変わりました。
耐震等級、省エネ対策等級、熱損失係数(Q値)…etc
住宅の性能を数値で評価する事があたり前になってきました。
勿論、その評価値を上げるようとする事は無駄だとは思いませんが、私(佐藤)がいつもお客様(これから家を建てようと思っている方々)と話をお伺いして感じる事は、例えば熱損失係数(Q値)をどうこう…という方は一人もいらっしゃらず、むしろ
数値にはなかなか表せない夏の一番暑い日でもエアコンを使用しないで家の中に入ってくる『そよ風』を期待される方がほとんどなのです。

これはその立地条件を把握した上で、風の通り道をキチンとプランに反映させるアナログの世界の事だと思います。

例えば1つの病気に対してもさまざまな症状が出て
それに対して医師が適切な診断を下し、人それぞれにちがう薬を出すのと同じで、
そこに住まう人の尺度によって家は建築されるべきだと思います。

やっぱりレトロな焼き鳥屋で『生中おかわり~』と言いたいですヨネ。
『家』というものも、ある程度のスペックは維持した上で
その人の求める雰囲気を具現化(醸し出す)できる建築士でありたいと強く思う出来事でした。

これはスマホに染まりたくないという私の無駄な反骨精神の表れなのでしょうか(汗)

「デジタルとアナログのはざまの価値」に乾杯!

第67回 『ポジティブ思考(1+1=3の方程式が成り立つ時)』

本当に心底自分を鼓舞(こぶ)して前向きに物事を進めていく事は大変だと思います。

人生は小さな挫折の連続で喜びの数は指折り数える程‥なんて感じる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
頭を抱える様子 例えば仲の良い友人から急に冷たくされる様になった‥とか
大事な試験で点数が取れなかった‥とか
給料や賞与が下がった‥とかとか。

松本徳千氏著『ポジティブ思考になる心と脳の習慣術』という本にも書いてあるのですが、本来、人間という生き物は身の安全を守る為にマイナス思考・ネガティブ思考になる様にできているそうです。

一例が書いてあります。
いかにも崩れ落ちそうな腐りかけた木製の橋が川にかかっていたとします。
これを渡れば向こう岸に辿り着くことができるのですが、多くの人は躊躇します。なぜなら橋が腐りかけているので、渡る途中で落下して川に転落するかもしれないからです。
このケースの場合「崩れないよ平気さ!」と言って渡っていく事はポジティブ思考ではありますが、ポジディブに考え、行動した結果、落下して命を落とすかもしれません。

これらは全て、失敗のリスクや失敗して傷つく事から脳が自分を守ろうとしている働きからくるものだそうです。

つまり、ネガティブになる事は本来それほど悪い事ではないのです。

先日、この『ネガティブ思考』の事例を『超ポジティブ思考』に変える出来事がありましたので、今回はその話を書き綴りたいと思います。

兄弟でランニング 私(佐藤)は健康の為、週に1〜2日は帰宅した後に10kmくらいのランニングをする様に心掛けております。

毎回同じコースを走りますので、ちらほら行き交う人と顔なじみになります。

特に印象的だったのは、ほとんどの方は1人でもくもくと走っている中で、
初老の(恐らく70才台の方)とそのお孫さん(?)2人連れで走っている方がいらっしゃいました。お孫さんは2人そろっていつも自転車に乗ってヘルメットもしておりましたので、とても目立ちました。

しかしある日を境に約1年くらいパタリと見かけなくなりました。
これは単に走る時間を変えたんだろう‥ぐらいにしか思っていなかったのですが、先日、本当に1年ぶりくらいに私の自宅前でバッタリお会いしました。

やはり横にはお孫さんらしき子供が1人(自転車に乗ってヘルメット)が連れ添っています。

私が

「あの〜久しぶりですネ〜」
「いつも一緒のお兄ちゃんはもう卒業ですか?」

と聞くと、その初老の方(名前は不明)は

「実は上の子はちょうど1年前に交通事故で亡くなったんですヨ」
「つらくてつらくて今住んでいる所にいると色々思い出しちゃうんで引越しも考えたのですが‥」
「この下の子が友達もいるのでココがいいって言うもんでネ」
「一周忌法要も終わったのでその子の為にも今までと同じ生活を始めようと思いましてネ。またランニング、始めたんですヨ」
「不思議と走っていると横にその子もいる様な気がして何か落ち着くんです」

この話を聞いて、私は自分の身内が亡くなった時よりもかなり大きな衝撃を受けました。ある意味『死』というものを最も身近に感じた瞬間でもありました。

週に1〜2日でしたが、いつも微笑ましく見ていたあの光景がもう見れない(可愛い2人組の兄弟の姿がもう見れない)と思うととても悲しくてやりきれない気持ちになります。

自分の子供がもし亡くなったとして1年後に同じ生活が出来るだろうか?
恐らく私は絶対に無理。

そのお祖父さんの言う様にいろいろ思い出してしまうので引越してしまうかもしれません。

ポジティブ思考 でもそのお祖父さんが言っていた
「走っていると横にその上の子もいる様な気がして‥」という言葉が全てを物語っていました。(救われました)
1人+(プラス)1人=(イコール)3人。
3人で走る!!という『ボジティブ思考』は
これからの私の人生の中で大きなテーマとなりました。

悲観的になったりネガティブ思考になる事は何も悪い事ではありません。
ただ、長い間その考えの中に身を置いても何も生み出しません。
日常の生活の中で小さな幸せを見つけて前向きに生きて行きたいと思います。
『超ポジティブ思考』を今の仕事である建築の世界で表現出来れば最高ですネ。

これから、私(佐藤)が設計する建物のテーマは『ポジティブになれる家』でどうでしょうか?(笑)

第66回 『新築ブルー』

突然ですがここで問題です。
下の図面は習字教室を併設した住宅を建築したい…。という御要望を持ったお客様(A様)が とある工務店に図面を依頼して出てきたものです。
(その工務店の名誉の為、図面は当社で多少デフォルメしております)

とある工務店が出した習字教室の図面
A様 「佐藤さん これ見てどう思います?」
「私、あまりに適当すぎて その工務店で建てるの辞めました💢」
私(佐藤) 「これはひどいですね~」
「A様の生活の事などまったく考えていないのがよくわかります」
「辞めて正解です」

さて、この図面の何が問題なのかわかりますか?
よーく図面を見て考えてみて下さい。
制限時間は1分(笑)
(答えは 一番最後)

本来は幸せの絶頂(?)であるべき『結婚』。
ところがその結婚を現実のものとしていざ直面すると結婚後の生活の変化や家族を持つ責任への不安などから突然憂鬱になり 精神的に不安定になるいわゆる『マリッジブルー』という言葉がありますよネ。
指輪交換 男女を問わず、『本当にこの人でいいのだろうか???』
誰もが一度は考えた事があるのではないでしょうか?

一生で一番大きな買い物と言われる『家づくり』。これもまた、本当にこの工務店(ハウスメーカー)でいいのだろうか?と深く考えてしまうのも同じ事だと思います。

人の好さそうな地元工務店の社長さん。
バリバリ仕事が出来そうなハウスメーカーの営業マン。
そんな人のつながりを大切に思って依頼した『我が家』。
ところが何となくプラン(図面)やコスト(価格)の面で不安を抱えたまま家づくりを始めると 『本当にこの家でいいのだろうか?』
『本当にこのハウスメーカーでいいのだろうか?』と次々と疑問が湧き出てきて憂鬱になり 最悪、楽しいはずの注文住宅が苦痛になってしまう事もあります。
これを俗に『新築ブルー』と言うそうです。(←新築ブルーというワードで検索すると非常に多くのブログが出てきます(悲))

この『社長のひとり言』を読んで下さる方々は少なからず建築に興味を持たれていらっしゃると思いますので僭越(せんえつ)ながらこの『新築ブルー』に 陥ってしまった時の抜け出すアドバイスをさせて頂きますと…

それは ズバリ 考え方です!

  1. ①「今、苦労している分、必ず新居は素晴らしい理想的な家になるはずだ…」 ←と強く思う
  2. ②不安に思っている事を正直に依頼先に話して相談に乗ってもらう ←抱え込まない
  3. ③「新築住宅を建てよう!!」と思った時の楽しい事を思い出す ←もう一度家族で話し合う
  4. ④このままアパート暮らしを続ける事の不利益を考える。 ←アパートよりは絶対、生活環境は良いはずだと思う
  5. ⑤新築後、すぐに建物を売却してもう一回家を建てる事を考える。

⑤はちょっと極端な考え方だと思う方もいらっしゃると思いますが、
実は一番効果的な考え方だとも言えます。
(勿論、経済的な問題はありますが…)
この極端ともとれる考え方は何も建築行為に限った事ではありません。

ひらめいた人 結婚でも、仕事でも、スポーツでも
『こうでなければダメ!』という考え方を一旦リセットして、全力でやるだけやってそれでダメならそれはそれでその時考えよう! という発想の転換が人生を楽しむ上で重要なのではないでしょうか?


今回は建築業界に身を置く者として『新築』というフィルターを通して少々真面目にコメントしてみました。
皆さんはどの様にお考えでしょうか?
(私)佐藤と会う機会のある方はご意見聞かせてください(笑)

(問題の答え) 普段の生活でトイレに行く際、教室を通らなければならない。
(習字教室をやっている時はトイレに行けない)

これじゃぁ~気分もブルーになりますよネ。

第65回 『階段の無い2階建て住宅』

自宅の壁に掛けてある英会話の日めくりカレンダーを見ていて思った事なのですが、私が中学生の頃は英語の授業で、その授業が始まる前に、必ず英語で挨拶をする習慣があり、いつも先生が、「How are you?」と聞き、私たち生徒が毎回「I'm fine thank you.」と答えていた事を思い出しました。

その日めくりカレンダーにはその他にも「I'm pretty good.」「I'm OK.」「I'm not good.」などの挨拶が表記してあります。
当時、中学生の時にはまったく不思議に思わなかったのですが、体調の悪い時や、気分が乗らない時でも「I'm fine.」のやりとりばかりで、もう少し臨機応変にいろいろ勉強すれば良かったなぁ~と大人になった今頃になって思う事も多くなりました。

社会人になった1年目に直属の上司からこんな一言を言われました。

上司 「佐藤な、仕事だけでなく世の中でこれからお前のまわりで、起こる様々な事柄の約50%(半分)は思い通りに行かないと思え」
「その50%の中でも20%くらいは全くどうやってもうまく行かない部類だ」
「残りの30%をとれるかどうかで人生は大きく変わるから、常日頃から努力を忘れるな!」

と言っていた上司は、翌年、転勤と同時に奥さんと離婚をしてしまいましたのでそれを機に会社を退職してしまいました。
これはある意味、どうにもならない20%の部類ですかね~。
ただ、これによりその言葉の信憑性が増したのは確かです。

最近、プランの打合せをしたお客様から出た要望が、まさに臨機応変に対応しなければならないその「30%」の事案でしたので、その事を3例ほど書き綴ってみたいと思います。

(例1)家の風呂を露天風呂にしてほしい

あたりまえですが、日本には四季があり冬は寒くてとてもじゃないですが露天風呂は使いにくいですよネ。第一雪でも降ってきたら風呂には入れません。台風や集中豪雨の時も使用できません。
そこで、風呂と脱衣所の天井を全て強化ガラスにしていつでも空が見える露天風呂の「雰囲気」を味わえる風呂を設計しました。
これにはオーナー様にも非常に喜んで頂きました。
これはやって良かった30%の部類。

(例2)安ければ大地震の際には壊れても構わないのでコスト重視の家を設計してほしい

最近の新聞などでも発表されていましたが、首都圏でM6.8以上の大地震が30年以内に起きる確率は60%以上と言われております。
我々、建築士はその有事の際でも安心して住んで頂ける建築物の設計を要としているのですが、投資家であるこのクライアントは、自分がその家に住むわけではないので(賃貸ですから)建築確認申請さえ通れば後は何でも良い・・・と言って無理難題を言ってきました。
結局、このプロジェクトは丁重にお断りしましたが、これはやらなくて良かった30%の部類だと思っております。

(例3)階段の無い2階建て住宅を設計してほしい

クライアントは別に足の不自由な方ではなかったのですが、2階までスロープで行きたい・・・という要望で、階段はなくしてもらいたい・・・との事でした。
建築学の「計画」という指針に、『スロープは1/12以下とする』『外部スロープは1/15以下が望ましい・・・』という条文があり、これを基準として30坪程度の住宅で2階までスロープで行こうとその距離を計算すると、約33m必要となります。
これは家のほぼ4面全てをスロープ化しなければならない為、住宅の有効面積(部屋として使える部分)が全体の2/3になってしまう事を表わします。
奇をてらった住宅として(作品として)雑誌やHPで発表する為のものであればそれはそれで良かったのかもしれませんが、使いづらい住宅を設計したと誤解されるのも良くないなぁと考え、クライアント様にはゆるやかな階段のあるPLANではいかがですか・・・と提案させて頂きました。これは施主の言う通りにやるべきだったかどうか判断に悩む30%の部類となりました。

毎日、いろいろなお客様からいろいろな要望を聞いていると想定外の要望が出てくる事も多々ありますが、その要望を私なりに消化して良い球を投げ返す事が臨機応変という事なのでしょう。

物は考えよう。
何でも思い通りになる人生なんてあり得ないしつまらない。
思い通りに行かない中にあって努力して一筋の光が見えた時に嬉しさを感じるのが人生なのかもしれませんね。

「I'm OK.」

第64回 『まるじゅうろく』

先日、娘の卒業式に出席した際、「自分史」という名目で産まれてから今まで生きてきたその様を「自分の歴史」といった感じで発表する場がありました。
親に対して感謝の意を示す意向もあった様ですが、いろいろな写真を交えながら発表する娘の姿を見て微笑ましく思えるのと同時に私が忘れていた様な些細な事でも娘に とってはとても大きな思い出になっていた事にも気付かされたりで・・・子供の成長はとても早いなぁ~と感慨ひとしおで思わず涙がこぼれました・・・。

海外旅行に連れて行ってあげた事が思い出なのかと思えばそうではなく、実は近くの公園にお弁当を持って遊びに行った事の方が楽しい思い出だったり、運動会で一緒に二人三脚をした事がとても印象に残っていたりで、大人の主観で、これは子供は楽しかっただろう・・・と思う事自体がエゴだったりするのかなぁと考えさせられたりしました。(思い出はお金じゃ買えませんね)

一般の方はご存知ないかもしれませんが、建築士の資格試験に「製図」という項目があります。その「課題」は実に多岐にわたり図面を描く為の条件が明記されています。その条件が一つでも欠落しているとどんなに正確で綺麗な図面を描いても不合格となってしまいます。

あまりにもシビアな話しなので、私は一度この試験を管理している「建築技術教育普及センター」に問い合せをした事があります。
(実際には一級建築士試験は建築士法第13条の規定に基づいて国土交通大臣により行われます)その際の回答はこうでした。

『課題』はあくまで試験の為ですが、もしそれが実際に住宅や商業施設を建てるオーナーや公共団体であったとするならば、その意向をしっかり理解して組み取り、さらに良い物へと発展させたプランを作成し監理するのがプロの建築士の仕事です。
そのクライアントの意向を細かく読み取れないのであれば、それは建築士としての能力が不足していると言わざるを得ないでしょう・・・と。

納得です。

今からもう10年近く前に設計・監理をさせて頂いたクライアント(T様)の事を思い出しました。
その奥様はとても建築がお好きな方で、インテリアなどにも興味を持たれていらっしゃいました。
しかし、色々な事を考えすぎてしまい、ご要望内容に一部矛盾が生じておりましたので、私(佐藤)はその奥様に「家づくりで本当にやりたい事に1位から順に優先順位をつけて実際に書き出して整理してみてはいかがですか?」と提案させて頂くと、奥様も心良くそれを受け入れてくれました。

さて2,3日後、T様よりFAXが届きました。
なんとA4紙いっぱいに①番から⑯番までビッシリ・・・と要望が書かれております。
それを見て、私(佐藤)の建築士魂に火が付きました!
①番から⑯番まで全ての要望を入れたPLANを作成し、プレゼンさせて頂きました。

今でも鮮明に覚えています。その際の会話。

(T様) まるじゅうろく(⑯)まで全て要望が入ったプランは佐藤さんのだけです。
今まで4社にプラン依頼しましたが
だいたいじゅうばん(⑩)くらいまでしかプランに反映されていなくて・・・
やっぱり無理なのかなぁ~って思って諦めかけていたところなんです。

確か「まるじゅうろく」は全ての入口扉を引き戸にする・・・といった感じのものだった様な気がします。
後々、T様にお話しを伺いすると、近い将来、足の悪いお義母様を介護の為に引きとらなければならない・・・という事で、車椅子を視野に入れてどうしても引き戸にしたかった様なのです。
⑯番目(下位)だからといって「いいじゃないか」とか「我慢して下さい」はやはり建築士としては失格だなぁと痛感した物件となりました。

これは先程、お話ししましたが、娘が私が忘れていた様な事でも大切な思い出として覚えていてくれた事に通じるものがあると思います。
こちらが小さい事と考えていても相手にとってはそれは切実な問題だったりするのかもしれませんね。
今まで以上にお客様の「家づくり」に対する御要望をヒアリングする際には、どんな些細なワードでも聞き逃さず常にプロとしての自覚と誇りを持って取り組んでいこうと再考させられる一幕となりました。

ちなみにこれ以降、私の車のナンバーは『・・-16』です。
見かけたら声を掛けて下さいね(笑)

第63回 『見方は味方(みかたはみかた)』

普段の土日や祝日は、お客様との打合せの予定が入る事が多いので自分の子供たちとさほど接する事ができません。ですからお正月やお盆休みは極力、子供たちと遊べる様に心掛けています。

ベイマックス と、いう訳で、この正月に長男が、ディズニー映画の「ベイマックス」を見たい‎というので、見に行ってきました。
この「社長のひとり言」を読んで下さる方の中にご覧になられた人もいらっしゃるでしょう。

内容は紆余曲折あって最終的に主人公の「ヒロ」が仲間やベイマックスの支えと共に精神的に成長していく…といういかにもディズニー映画らしい作品に仕上がっていて私(佐藤)個人的には前回の「アナと雪の女王」よりも感動しました。

この映画の中には繰り返し出てくるいくつかの「キーワード」がありますが、(実際にご覧になった方はわかると思います…)
その中で、私の人生の転機となったセリフが出てきたので走馬灯のように今まで忘れていた熱い「ハングリー精神」がよみがえってきました。

その「キーワード」というのは『見方や考え方を変えれば必ず解決策があるはずだ…』(←多分こんな感じのセリフ)です。

私が独立してまだ間もない駆け出しの頃、コンペティションでなかなか私の図面(プレゼン)が採用されず、自分には、設計やデザインの才能がないのではないかと悩んでいた時、当時、タッグを組んでいた構造設計担当のN氏が私に掛けてくれた一言が…

(N氏) 握手 「僕は佐藤さんの作るプラン好きだけどなぁ」
「才能あると思うよ」
「今はたまたまお客との相性が悪いだけ。 『採用(契約)にならなかったときは逆に、そのお客に対してこんなに良いプランなのにその良さがわからないなんてなんてバカな人だなぁ』と思えばいいんだよ」

今、思えばN氏の相当のお世辞であったと思いますが、少なくとも私はこの一言で劇的に考え方が変わりました。というか変える事ができました。

単純ですが自分が悪いと思って抱え込んでいた物の考え方を180°変えたことで仕事(設計)に対して新境地を開拓できました。

逆に、逆にです。
タクト設計の「プラン」や「プレゼンテーション」を認めてくださったお客様に対して、おごり高ぶる事なく誠心誠意対応しなければならないと同時に強く誓ったのも事実です。

映画「ベイマックス」の中に出てくるもう一つの「キーワード」
『ベイマックス、もう大丈夫だよ』という台詞に言うならば…
『タクト設計、もう大丈夫だよ』と言って頂くまで弊社を支持(採用)して下さったお客様にたいしてずっと寄り添っていきたいと改めて思った一幕でした。