2014年

第62回 『ぷにぷにハウス』

先日、お引き渡しさせて頂いた住宅のオーナー様は犬を3匹飼っていらっしゃって、最初にプランのヒアリングをした際にワンちゃんの足が滑らない様、 それ専用の床材にする事を強くご要望されていました。

犬ペットと共生できる為に開発された床材は各メーカーそれぞれ発売されていますが、初めて家を建てようと考えられているお客様にとっては なかなか知識が乏しく、それを我々、建築士に(イメージを)伝えるのは大変な事だと思います。

そのお客様(I様)はそのイメージ(感覚)を「ぷにぷにした床材」と表現しておりました。
ワンちゃんの話しが出るたびに「ぷにぷに」「ぷにぷに」を連呼するものですから思わず私(佐藤)も笑ってしまい・・・

私(佐藤) 「I様 ワンちゃんや猫ちゃん専用のフローリングという商品があってその商品自体の素材は「ぷにぷに」はしていないんですよ~」

と御説明すると

(I様) 「えっそうなんですか?」
「でも、今のマンションの床はペット対応という事で「ぷにぷに」してますが!?」

という事で後日そのご自宅(マンション)にお伺いしてみると、確かに床はぷにぷにしていました。

私(佐藤) 「I様これはCF(クッションフロアー)と言いまして塩化ビニールを用いた床材でどちらかと言うと、足が滑らない用・・・というよりは、 耐水性があるのでワンちゃん、猫ちゃんが粗相(そそう)をしてもしみ込まない様にしてあるものです」
私(佐藤) 「それに床を全てCFにしてしまうと家具を置いた所がその重みで凹み部屋の模様替えをした際にその跡が残ってしまう可能性がありますよ~」
(I様) 「そうだったんですね~」
「犬専用の床材ってこれしかないと思ってました~」

という、やりとりがあって完成した「ワンちゃんと共存する」I様理想の住宅が完成し、先日、引き渡しに至った訳ですが・・・
よくよく考えてみると、この「ぷにぷに」という様な擬態語・擬音語でその人が言いたい事を表現し、理解し、それを具現化する事ってある意味、 人間関係の根底にあるもので、決してコンピューター(デジタル)の世界では処理できない事だと思います。

ある雑誌に「2020年にはなくなる仕事ランキング」なるものが掲載されており、その中には「レジ係」「ガソリンスタンド店員」「受付、案内係」 「証券マン、不動産ブローカー」「生保レディ」など、などが挙げられておりました。

スタンンドの男性 確かに合理化や機械化でそれらに携わる人は少なくなるかもしれませんが、先程の「ぷにぷに」で伝わる事がある様に、
例えばガソリンスタンドでは、ガソリンを入れるだけでなく、タイヤの調子やオイルの量、さらには車から出るちょっとした異音(キュルキュルやブーンブーン)の話しを 聞いてもらってわかる事もあると思いますし、それは他ならない人と人とのつながりから得る大切な財産だと思います。

そういう財産が希薄になりつつあるのは少し寂しい気がしますね~。

とは言え、『ぷにぷに』な体型の「生保レディ」が『ガンガン』営業してくるのはちょっとご勘弁なのは私の我がままなのか独りよがりなのか?(笑)

第61回 『人生の取扱説明書』

毎日の生活は、何事も判断の連続である事に気づきます。
例えばすれ違いの出来そうにない細い道を車で走っていると向こうからもう一台の車がやってくるのが見えたとすると、「ここで停まって待った方が良いか?」「行くところまで行って向こうの出方を見るか?」とか

横断歩道にさしかかった時に信号機が点滅し始めて、「渡るのをやめるか?」「走って渡ってしまうか?」などなど。

特に会社の経営に携わると、一つの判断ミスが大きな損失となり、社員の生活にも影響を及ぼす可能性もあるので、何事にも多角的に考えて慎重に判断せざるを得ない事が多い。しかし大胆に打って出る事も時には必要だったりする。

昔、お世話になった不動産業を営む社長が口ぐせの様に言っていた事が今となっては心に響く。
『明日はこうなるから今日はこうしておきなさい・・・と言ってくれる人がいればどんなに楽な事が! どうしても自分一人では決められない事もあるよな~。でも決めなければならないんだよ・・・』
社長は孤独です(泣)。

会社の規模の大小やお金の多い少ない、従業員の数などに関係なく経営者はその経営がうまくいってあたりまえ。失敗すればその責任を負う。
大企業で取締役が何人もいる様な会社であれば皆で会議をして方向性を決める相談役がいるかもしれませんが、社長一人とあとは全員が従業員(これが日本の企業のほとんどだと思う)という中小企業は毎日が個人(社長)の判断の連続で、間違いの許されないプレッシャーがかかります。

でも、そうは言っても人間ですから、これまたいろいろと間違う事もあるわけですね~(汗)。
その間違いや失敗や損失は(私個人的には)いろいろな人たちに助けてもらって、なんとかその都度その都度しのぐ事が出来ていると思います。
結局、いろいろな判断も、それに携わる人たちの影響を少なからず受けていると思えますし、よい人付き合いは結果的に良好な判断をもたらし、悪い人付き合いは、間違った判断を導く事につながるのではないかと思います。

最近あった事件で、全盲の男性が連れていた盲導犬が、何者かに刺され、けがをする事件がありました。 この盲導犬は人前では決して吠えない様に、訓練を受けていた為、さぞかし痛かっただろうに吠えずにじっと我慢をしていたと報道されています。

さらにこんな事件もありました。
いじめられている同級生を見かねて「いじめるなら私をいじめて・・・」とかばった女子児童が暴行を受け全治1週間のケガを負ったというものです。
この女子児童に話しを聞くと「いじめを見るのが嫌だった」と話しているそうです。

世知辛い世の中ですが、2つの事件に共通して言える事は、この加害者側の人間たちの中に1人でもこの行為や行動は良くないぞ・・・と言える仲間がいれば事態は違ったかもしれないという事です。

「刺す」とか「いじめる」とかいう間違った判断をする心理状況にならない様な暖かい人間関係の中で日々の生活を送りたいものですね。

先程の不動産業の社長ならこんな時はこう言うでしょう。
『こういう時はこうしなさい・・・という人生の取扱説明書があればどんなにいい事か・・・』

だけど、人生は『取扱説明書』の様に行かないところが逆に面白かったりするのもこれまた事実。

生きるって事は大変な中にあっても幸せな事を見つけて進んで行く事なのかもしれませんね~。
あ~予知能力が欲しい~(笑)

第60回 『一番大切な事』

社長のひとり言もついに60回の節目を向えました。
今回は少し真面目なお話しです。
天丼の話しではありません。

平成12年に独立起業して平成14年に法人化。
勿論、当時は社員など雇える訳もなく一人で全てをこなしている時代でした。
クライアントとの打合せから図面作成、確認申請業務、現場監理、対役所の調整業務…etc。今思えばよく一人でやっていたものだと我ながら関心します。
言い方を変えれば『必死』だったのだと思います。(今でも毎日必死にやってますが…)

少しずつですが仕事量が増えていき、「流石に一人ではもう無理!」となった時、(独立して2年目くらいだったと思います)初めて社員を募集した事をついこの間の様に思い出します。(月日が経つのは早いものですね~)

当初は一人を雇い入れる予定でしたがなんと20人くらいの応募があり、その中で建築の専門学校を卒業したばかりで経験はなかったのですが、とてもやる気のある人材が2人いましたので思い切って2人とも雇い入れる事にしました。

創業2年目の若い会社としては大分冒険でした。
幸運にもその後、仕事は増え続け、売上げも順調に伸びましたので、その社員の給料や賞与も支払う事が出来、なんだかんだで創業から14年間やってくる事が出来ました。

その間、世の中ではリーマンショックや東日本大震災などの大きな経済の波もありましたが、弊社はそれほど大きな影響を受ける事もなくうまく乗り切ってきました。
社員の数も倍になり、無理をしなければある程度は安定した会社運営が出来る基盤は出来たと思っております。

弊社タクト設計事務所を支持して下さるお客様も増え、ご紹介も頂ける様になったのは幸せな事だと思っております。

これはお客様(クライアント)が我々のサービス(PLANや現場監理能力・コスト管理能力)を認めてくださった賜物だと思っておりました。

しかし!!先日、ある経営コンサルタント(H氏)と突っ込んだ話しをする機会(簡単に言うと飲み会)があり、そこで言われた一言がとても衝撃的でした。

(H氏) 佐藤さんとこは、勿論プランニング能力やデザイン提案力は高いんだけど、商売がうまくいっているのは実は『人』に恵まれているからだと思うんだよね~
(佐藤) 『人』ってお客様のこと?
(H氏) それもあるけど、従業員とか実際に現場で工事をしている職人さんとかが佐藤さんの方を向いているっていうか…
いいバランス関係にあると思うんだよ。
何て言うかこう『足を引っぱる奴がいない』っていう感じかなあ。
ほらぁ、よく「ブラック企業」って言われる所は従業員や関係者が会社を辞める時に『唾を吐く』わけよ。
俺ら、いろいろな企業見てるけど、実は経営自体に問題がある会社より人間関係に問題がある会社の方が多いよ。本当。
      ・など
      ・など
      ・など

弊社の社名である「タクト」はオーケストラの指揮者の持つ「タクト棒」に由来するものです。
指揮者はお客様です。
どの様な音を奏でるかはお客様のご意向次第ですが、どの様な音でも出せる様にプロとして従業員や職人一同準備をしておかなければならないと改めて考えさせられたアドバイスでした。 ありがとうHさん。

住宅や店舗の建築行為に限らず、商売で『一番大切な事』は良い物良い人間関係の中で(気持ち良く)お買い求めて頂く事に他ならないと痛切に感じました。

それでは只今工事中の Nさん Hさん Yさん Kさん Iさん
気持ち良くなっていただきましょう!(笑)

第59回 『海老天丼のシッポ』

学生の時によく行った天丼の「いもや」が先日移転して、新規開店したので昔を懐かしんで行って来ました。

当時は天丼一杯550円で海老天丼のシッポもさることながらゴハンつぶも一粒残さず食べきると50円を返却してくれる(つまり500円)のシステムが面白くて今だに覚えていたわけです。

いざ行ってみると今は650円。(値上げしてました)
しかし食べきると600円にしてくれるシステムは同じでした。

その当時、同級生が店主に
『エビのシッポも食べないと駄目ですか~?』
と聞いたのをなんとなく覚えていて・・・
店主が
『うつわを洗うのが楽になるだろう』
『ギブアンドテイクだよ』
『あと、エビのシッポにもちゃんと栄養があるんだよ』
という様な(?)やりとりをした記憶があります。

その時は、『エビのシッポにも栄養がある・・・』というフレーズの方が気になっていましたが、今、社会人となってからしみじみ考えた時、『ギブアンドテイク』というワードの方が深かった・・・と思い出しながら、25年ぶりに「いもや」の海老天丼のシッポをしっかりと食して来ました。(ちなみに移転して名称が「神田天丼家」に変わっていました)

ネット社会になった今、いろいろと調べてみると当時からこの「いもや」の店主はエビのシッポも美味しく食べられる様に下ごしらえしていた様です。つまり、普段は見落してしまう様な事にも気をつかっていた・・・という事なのですね~。
ありがとう「いもや」のおっちゃん。

『ギブアンドテイク』このワードについて深く考えさせられる事件(?)がありましたので、それについて少し書き綴ってみたいと思います。

建築工事の請負契約を結ぶ際にお預かりする契約金。相場(?)として100万円を契約金とする事が多いのですが、あるお客様(K様)との契約の場で、この100万円の契約金のお札の枚数を数えていると101万円あるのです。

数え間違いかと思い再度数えてみるとやはり101枚つまり101万円あるのです。


一応、念の為、3回目を数えてみても101万円あります。もはやこれはお話しするしかない・・・と思い意を決して・・・

私(佐藤) あの~K様、101万円あるのですが・・・
K様 えっ、あそう?
ちょっといい?

      とK様が再度数えるとやはり101万円あった様で

K様 あっごめんなさい
確かに101万円ありますね~
数え間違えちゃったみたいです~ アハハ・・・

という感じで、私(佐藤)を試す為に仕組んだ事ではない様で(ごめんなさいK様)単純な間違いだった様です。

でも、これをネコババしていたらどうなっていた事やら。(やりませんけどね)

これはこれで無事(?)契約が終わったのですが、
この話しには続きがありまして・・・

数年後、このK様の娘さんがお子様を(つまりお孫さん)を出産されたのを風の便りで聞きましたので、出産のお祝いをお送りしたところ、そのお返しにお菓子とお手紙を頂きました。 その手紙には1万円が同封されていました。

手紙にはお礼の言葉と『あの』契約の時の101万円の思い出話しが書いてあり、
『この1万円で社員の皆様と何か美味しい物でも食べに行って下さい』とありました。
そして
『これで私の気持ちも収まります』と結ばれておりました。

そんな事があったのをすっかり忘れていた私(佐藤)は、
『家を建てて終わりではなく人と人の関係はずっと続くものだなぁ』としみじみ思った一幕となりました。

さて、この『社長のひとり言』を読んで下さる皆様はもはや海老天丼のシッポを見たら必ずや「タクト設計事務所」と思い出すことでしょう。
そしてこの「佐藤」がどんな人間なのか知りたくなるでしょう。

それでは一度、住宅について「タクト設計事務所」に相談してみましょう!(笑)
お問い合せ、お待ちしております(笑)。

第58回 ジョーカーとババ

年末年始やお盆で故郷に帰省した際に家族みんなでやるトランプゲーム。このトランプにある『ジョーカー』。このカードはゲームの内容によっては、とても有益なカードですが、時として有害なカードにもなり得ますよネ。

例えば、『大富豪』というゲームでは最強カードとなり配られたカードに『ジョーカー』が入っていればとても「ラッキー!」となりますが、『ババ抜き』では最後まで持っていたくない、いわゆる『負けの象徴』カードにもなります。

同じカードなのにこれほどまで天と地の差があるのはよくよく考えてみれば、 恐ろしい事だと思いませんか?これがカードゲームの世界だけならいいのですが、 残念ながら我々が携っている建築の世界にもあるのです。

ここからは少〜しディープなお話となります。今現在、建物の建築会社を数社で競合検討されている方は覚悟して読み進めてください(笑)

実際にあった例です。
話の主役はH様。とある不動産会社の建築条件付の土地をわざわざお金を払って条件をはずし、某ハウスメーカー3社と競合の後Hハウスと契約をしました。

その時の営業マンは「カタログに載っていない事でも何でも出来ます!」「価格もガンバリます!」「私を信用して下さい!」と言い切ったそうです。H様は予算とスペック(仕様)を予め伝えてあった事と、誠実そうなその営業マンの人柄で契約を決めました。

Hさんにとって、理想的な夢のマイホームが手に入る手伝いをしてくれるこのHハウスの営業マンは、そう、トランプゲームの『大富豪』で言うところの最強カード『ジョーカー』に思えたそうです。

ところが詳細設計とそれに対する再見積りが始まると事態は少しづつ不穏な空気に包まれ始めるのです。

①Hさんの意図する設計図が出てこない。

工業化住宅認定を受けたハウスメーカーはプランニングルールから逸脱する設計は出来ないのです。

②カタログに載っていないキッチンや洗面台、階段などを指定のメーカーに変更してもらおうとするとすさまじいオプション金額が提示された。

そもそもそのハウスメーカーで供給している部材しか施工した事のない職人は特別な部材(材料)の取付に不慣れな為、施工費は工務店の3 〜4倍くらいは計上されます。

③せめて床材だけでも自分たちの理想の木曽ヒノキにしてもらう為、材料卸問屋と交渉したが…

そのハウスメーカーの工事監督から何月何日の何時に現場に材料を入れる様に指示された。

結論  このHさんはHハウスとの契約を破棄。 契約金200万円を「どぶに捨てる」事となってしまったのです。 つまり、楽しいはずのマイホーム造りが『ジョーカー』が転じて『ババ』をひく事になってしまったのです。

このHさんとは最終的に弊社タクト設計とも契約には至らなかったのですが、 Hハウスとのやりとりに対してアドバイス(契約破棄は200万円がもったいないのでなんとか物事が進む様に…) してさし上げた事にたいそう喜んで頂き、 こんな言葉を頂きました。

Hさん 「高い授業料だったけどあのまま進めなくて良かったよ」
  「佐藤さん、あいだに入って大変な思いさせちゃって申し訳なかったね〜」

建物を建てる事だけが建築士の仕事ではないな〜と感じた一幕でした。 我々タクト設計事務所は家づくりを真剣に考えているお客様にとって 『最高の切り札』になる様努力いたしますので宜しくお願いいたします。

《追伸》『ジジ抜き』というカードゲームもあるそうです。
ちなみに『ジジババ抜き』という言葉は2世帯住宅を避ける隠語だそうです。
そのうち『ジジババ オヤジ抜き』という隠語も出てくるのだろうか?(笑)