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社長のひとり言

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第21回 「マッサージとマイホーム」

わたくし事で大変恐縮ですが職業がらパソコン(CAD)に向かって丸一日を過ごすことも多いので1ヶ月に約1回知り合いのマッサージ師さん(以下H氏)にお願いしてマッサージをしていただき、肩や腰の凝りをほぐしてもらっています。それが縁でそのH氏の御自宅のリフォームの設計・監理の依頼を受け、約1ヶ月間に及ぶ大改造が先日やっと完成しました。

外壁や屋根、さらには床下の土台の補強工事など構造躯体の梁や柱を除いてほとんどが新しい物に交換したわけですが、その工事において私が大きな衝撃を受けた事が一つありましたので、今回はその話をしてみたいと思います。

築20年を経過している木造家屋の場合、大抵構造躯体である柱や梁や土台は日本独特の湿気により、反(そ)ったり、割れたり痩せてスカスカになってしまっているものが多いのです。しかも問題なのは現行の建築基準法で換算した場合に、耐力壁が不足したり金物が適切に取り付けられていないことが多く、結果的に補強工事をしなくてはならなくなり、予想以上の出費になってしまう例もしばしばあります。

話しをもとに戻しますが、私がそのH氏の住宅のリフォームの監理をしていて驚いたのは、築20年以上も経過している住宅なのに木材がほとんど劣化していなく、むしろ木材と木材のかみ合せがより強固になって狂いがなく耐力壁として適切に作用していたことです。

この事をH氏に話すとH氏は「ニヤリ」と笑って私にこう言いました。
「佐藤さん、笑わないで聞いて下さいヨ 」
「『家』にもマッサージと同じ『ツボ』があると私は思っているんです。つまり家も人の体もまったく同じで肩凝りのツボを押せば肩凝りに効く様に、家で言えば壁には壁のツボ、屋根には屋根のツボがあるんです・・・」
その話を聞いた時、私はいつも以上に肩に凝りを感じてしまいました・・・

なんでもH氏の今はもう亡くなられたお父様は一級建築士で約20年前にこの住宅を建築する際に今ではあたり前になっている壁内通気や外断熱工法を取り入れていたそうです。さらにその当時ではめずらしく木造2階建てなのに構造計算も行ったおかげか現行の建築基準法と比べても遜色のない耐力壁の壁量を確保しています。

H氏が言いたかった「ツボ」というのはあたえられた建築物(ハード)を適切にメンテナンスする・・・ということらしいのです。プロ野球のピッチャーが肩やヒジを入念にマッサージするのと同じで例えば、屋根の雨樋に枯れ葉が溜っている様では雨水が適切に排水されず、いつまでも残り、ついには湿気で樋が劣化してしまうのでそれを取り除く・・・つまり家にマッサージをしてあげる事が必要だと言うのです。

「マッサージ」や「ツボ」という言葉で家のメンテナンスを表現するあたりはいかにもマッサージ師さんらしいですし家も人も手を掛けて世話をすれば劣化や痛みを抑えられるという点で同じだという発想はとても共感できるものでした。

さて、今工事監理中の物件、明日はどこの「ツボ」をおしてみようかなぁ。

第20回 「今の日本の住宅事情を考える」

先日、現在の住宅事情を考えさせられる事がありました。
長年お付き合いしていた畳業者さんとタイル業者さんが、残念ながら廃業されたのです。
理由は2つ。
1つは職人さんの高齢化によるもので、身体がついていかない為リタイヤするとのこと。
2つ目は仕事が極端に減ってこれ以上続けていけない・・・というものでした。

確かによく考えてみると私が今手掛けている住宅で和室のある間取りは約2割強しかありません。たとえ畳があったとしてもそれは和室ではなくタタミコーナー的な存在で、4.5帖くらいの小さなものが多い傾向にあります。その傾向はここ2、3年で急速に強くなった気がします。
畳業者に限ったことではないのですが、職人さんの高齢化に伴い畳の良さを伝える(営業する)ことが出来なくなってきていることや、現実問題、畳の上で寝るよりもフローリングでベッドで寝る事が多くなっている今の生活スタイルの変化が挙げられるのではないかと思います。

タイル業者に関しても同様のことが言えると思います。
昔はお風呂と言えばタイル貼りでしたが、ユニットバスやシステムキッチンの台頭により住宅においてタイルを貼る部所がなくなってきました。せいぜい玄関ポーチに数枚タイルを貼る程度です。

私個人的には、畳の上に布団を敷いて寝ていますので和室が好きですし、ユニットバスよりタイル貼りのお風呂の方がオリジナル性を追求できて好きなのですが、最近のクライアントと話をしていると、メンテナンスの観点からユニットバスを選ぶことが多いですね。

そんな中、時代とまるで逆行する様な面白い依頼が1件ありましたので、お話したいと思います。
その依頼はお風呂場、洗面所、キッチン(水廻り)以外のすべての床を畳敷きにして欲しいというもので、もちろん廊下やホールも畳敷きです。クライアントからよくよく話を聞くと、書道教室を開いている方で、小さい頃から正座をして物事をする癖がつき、自然と畳があるのが当たり前になった・・・というのです。
その方はスリッパを履く習慣がないので、どこでも素足で歩ける家にする為に考えた結果、床は全て畳がいいという結論になったとのこと・・・
斯くして全部で48枚の畳が敷込まれた「畳ハウス」が完成した訳ですが、畳業者さんの廃業と同時期というなんとも皮肉な結果となりました。

職人さんの高齢化に伴い、これから増々システム化ユニット化された住宅が多くなる日本の住宅事情を考えると、「建築」という物作りとしての楽しさが見失われ、ただの金儲けの手段の一つに成り下ってしまう気がしてなりません。
住宅に限ったことでなく、物作りという行為全てにおいて、いつまでも職人の「業(わざ)」というものを守り続けてもらいたいと願うのは私だけでしょうか?

第 19 回  「終の棲家」(ついのすみか)

今、グループホームという介護施設の設計をしています。認知症や手足の不自由なお年寄りを家庭的な雰囲気で介護する施設で、全国に約1200の事業所があるそうです。 そのスタッフの方から介護のあり方やお年寄りに必ず来るであろう「死」というものへの向き合い方について話を聞くうちに、私が設計している住宅(自宅)で満足した死を迎える人たちはいったいどのくらいいるのだろうか・・・と考える様になりました。

調べてみたところ、日本で1年間に亡くなる約100万人のうち自宅で最期を迎える人は2割に満たない・・・というデータがあります。昔に比べると病院が整備されたことに起因するところが大きいそうですが、病院だけでなく最近は、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設で亡くなっている方が増えているそうです。

度々、テレビなどのマスコミで老人の孤独死についての報道がされます。もちろんどんな形であれ「家族」に看取(みと)られ、幸せな気持ちで死んでいくことが理想ではありますが、私はこの孤独死の中でも、もし自分が「終の棲家」と決めた空間で死を迎えることができたならば、ある意味「満足死」に値するのではないかと思います。

グループホームのスタッフの一人が非常に印象に残る事を言っておりました。以下にその言葉の一部を示します。
『理想は自宅で家族に看取られて死を迎える事ですが、世の中にはいろいろな事情でそうすることができない人々がたくさんいます。ですから我々はその方々に最期を快適な空間で迎えてほしいと願っています。「あぁ、ここなら満足した死が迎えられる・・・」という気持ちにさせる建物がほしいのです。その様な建物の設計をお願いします』
これはある意味究極の設計依頼かもしれません。

世界的に有名な建築家「ル・コルビュジエ」でさえ、最期は6帖くらいの小さな小屋を「終の棲家」としたそうです。つまり「終の棲家」に求めるものは、大きさや規模、形といったハードの問題ではなく、建築のもつ内面性(ソフト)の問題ではないでしょうか?

今回はグループホーム(介護施設)でしたが、普段、住宅の設計をする時も、そこに住まわれる方が「終の棲家」と思っていただける快適な空間を提供することが我々建築士の使命かもしれません。
何をもって快適な空間と定義するかは人それぞれ答えがちがいます。数学や物理と違って答えのない分野がこの「建築」であり、答えを探してのめり込んでしまう、そんな魔力がありますネ〜。


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