今、八ヶ岳近辺のセカンドハウスの設計をしています。設計の唯一の要望は、『自然と一体になれる感じのものにしてほしい・・・』というもので、それ以外はありません。
クライアントは東京にお住まいの方ですが、その方の物の考え方が非常に新鮮でとても私にとって刺激のあるものでしたので、少し文章化してお話ししたいと思います。
その方(以下S氏)との出会いは、弊社HPを御覧になってメールでアクセスしていただいたのが始まりです。
何度かメールでやり取りをした後ちに実際にお会いすることになり、東京の御自宅にお伺いしました。
セカンドハウスを計画されている方でしたので、当然、マンションか一戸建て住宅にお住まいかと思っていましたが、S氏は賃貸のアパートにお住まいで、会うなり開口一番「セカンドハウスの設計を依頼する人がアパートに住んでいるとは思わなかったでしょう・・・」と言われ、驚かされました。
なぜならまったくその通りであり、考え方によってはセカンドハウスではなくてこれは『メインハウス』ではないか・・・と思えてしまったからです。
(ちなみにこの文章はS氏の承諾を得た上でHP上に発表させていただいております)
S氏は続けてこう言いました。「私は東京で働き、東京に住んでいますが、東京にマンションを買ったり一戸建てを建築するつもりはまったくありません」「なぜならここにいる私は本来の私の姿ではないからです。セカンドハウスのある場所(八ヶ岳)でこそ素の自分でいられると思うのです」と・・・。
正直、随分と宗教じみたことを言う方だなぁと思いましたが、話しを聞いていくうちに、八ヶ岳の土地は3年前にすでに購入済みで、今回の建築は10年間貯めた現金でお支払いをされる予定でローンは組まないことなど云々・・・。
これはかなり用意周到、計画的に進められた考えであることがわかってきました。
自ずとS氏の話しにも説得力が出てくるから不思議なものです。
S氏いわく、八ヶ岳には永住するつもりはなく、あくまでも生活の拠点は東京であるので今回の建築物はセカンドハウスだと・・・(そうなればやはりセカンドハウスと言えなくもないなぁ〜)
さらにS氏は続けます。「私は無趣味で休日にどこかに出かけるということはまったくしませんでした。毎日、家と会社を往復しているだけの人生ということになります。これでは『生活の為に仕事をしている』のではなく『仕事の為に生活をしている』様なものだと考える様になった」と。
「別荘」といえば昔は一部の裕福層の所有するものでしたが、生活スタイルが多様化する現在、そのあり方は変化しつつある様です。一般のサラリーマン世帯が『自己表現の一部』もしくは『脱日常の方法』として選択する時代になったのかもしれません。
又、将来永住する為にセカンドハウスを購入される方も増えてきていることも事実です。
とは言っても別荘なんかとても買えないョ・・・とお考えになる方も多いでしょう。何も別荘にこだわる必要はないのです。人はそれぞれこだわりを持った部分があって、それが例えばゴルフであったり、車であったり、バイクであったり、家庭菜園でも何でも良いのです。
そういえば、以前にも車のガレージが欲しいから家付ガレージを建ててしまった方がいらっしゃったことを思い出しました。その方も普通のサラリーマンでしたが、高級外車を所有されていて、日常と非日常のメリハリをその車でつけていた様に思えます。『車を家のどこからも眺められる家・・・』これがコンセプトでしたが、今回は『大自然をどこからも満喫できる家』で、見えるものは違えど、家を建てる根本的な目的は一緒だなぁと気付きました。
今回はたまたまセカンドハウスの依頼でしたが、もちろん普段は居住用として設計を依頼してくる方が多いわけで、その方々に対していかに建築士としてクライアントの要望を聞き出しそれを形にしていけるか・・・この使命(ちょっとかっこつけすぎ?)を改めて肝に銘じてがんばっていこうと考えさせられる一幕でありました。 |